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2017/05/30 16:11

こんにちは、きじばとや店主イイダです。

キモノ道の定説としてよく言われることですが、「はじめは着物を買い、次に帯を探し、小物の楽しさを知り、襦袢にはまる」
なるほどなるほど。確かに私もそんな感じの道をたどってきました。(まさに今、襦袢ばかり作っています)

それぞれに関してお話してみたいことがたくさんあるのですが、今回はちょうど小物に関する出来事が最近あったので、小物・・今回は帯締めについて書いてみます。

先日、コーディネート相談できじばとやにいらしたお客様から相談されたことなのですが、「この着物と帯の組み合わせだと、どういう小物を合わせますか?先日このように組み合わせてみたのですが、なんだかしっくりこなくて」
こういうご相談は、とても多いです。
同じようなお悩みをお持ちの方は、たくさんいらっしゃると思います。

そこで、いきなり答えを言うならばですが、・・・コーディネートなのですから、正解なんてないんです!
すごいことを言いました(笑)
コーディネート相談をやっておきながら、いきなり「正解などない」と言い切ってしまいました(笑)

でも、そうなんです。だって、おしゃれなんですよ。その人が好きなように着るのが一番いいんです。
正解なんて気にすることないんです。
ただやはり、「好きにしてみたんだけど、思ったような感じになってない。それがどうしてか分からない」という気持ちは、とても理解できます。なので、そういう方たちのお悩みを一緒に考えて、目指すスタイルに近づけるにはどうしたらいいか、ということをやっているのが、きじばとやのコーディネート相談です。

コーディネート相談をお受けしたお客様から、「これからどういう小物を増やしていけばいいのかアドバイスがほしい」と言われることも多いです。
そうですね、小物って意外と難しいです。
「これ素敵!」と思って買ってきたけれど、いざ合わせようと思っていた帯に合わせると、「・・・あれ?」となったり。
「これ、差し色にイイ!」と思ったけれど、なんだかダサくなってしまったり。
「これなら、紫の帯締めなんか合うと思いますよ~」と言われ、「あ、紫ならあります!」と答えたけれど、いざ合わせると合わなかったり。
「こんな色があるといいよね!」と思ったけれど、帰って合わせると、結局どの帯にも合わなかったり。


色の難しさは、ひとことで「赤」「紫」と言っても、色がひとつでないところにあると思います。
同じ赤でも、真っ赤もあれば、ピンクがかかった赤もあり、朱色もあり、黒が混じったような暗い赤もあり。
当然、明度や彩度が変われば、合う帯も変わってきますし、仕上がりも違います。
私が一番、色の幅があると思うのは、紫でしょうか。「紫の帯締めが合いそうだな」と思っても、明度や彩度によって、全く印象が変わる色だと思います。そして、明度や彩度が違うだけで、全く合わなくなったりする色でもあります。
よく、「あ、紫なら持ってます」とおっしゃる方がいらっしゃいますが、その紫!!ひとつじゃないんですよ!!!

先日、きじばとやにコーディネート相談にいらしたお客様とその話になり、同じ着物と帯の組み合わせに、明度や彩度の違う帯締めをのせて、実際に見ていただきました。
「えっ!こんなに変わるんですか!」と驚かれていましたが、本当に全く違うんです。
ですのでイイダは、同じ系統の色でも、数本ずつ(もしかしたら数本どころじゃないかもしれません)持っています。

そんなことを言っても、こればっかりは実際に帯締めを持ち、手持ちの帯に合わせていかないと分からないことですよね。
イイダのおすすめなお買い物方法は、お手持ちの帯を持って、お店に行くことです。
そして、お店の人にことわって、実際にいろんな帯締めをのせてみるのです。同じ紫や赤でも、明度や彩度を変えて、何本ものせてみてください。きっと、びっくりされることと思います。
そして、そういうことが分かれば、次からはもっと違う探し方ができるようになると思います。慣れていけば、「もっとこういう、こんなくすんだ感じの色がほしい。それじゃないです、もっと2段階くらい深い色。それじゃないです。もう1段階くすませた色です」とか言えるようになります。(そんなわけでイイダはとても面倒くさい客です・・・)

最後に、迷える皆様に、イイダが帯締めにおすすめする色をご紹介します。
合わせやすく、重宝する色たちです。
黒が混じったような暗い赤、深いぶどう色、くすんだぶどう色、赤みがかかった深い茶色(茶色は深さと濁りが勝負です)、蘇芳色、孔雀色。
特に孔雀色は、ピーコックグリーンとピーコックブルーとがありますが、どちらも差し色としてとても重宝する色です。すごく派手な色のくせに着物にとても合う色で、隠れた万能色と言ってもいいと思います。

意外と難しいと思うのは、青系統の色・・・特に、青や紺という色は、意外と難しい気がします。
紺色の帯締めを使いたいときがあるんですが、意外と合わせにくかったりする色です。そんなときにおすすめするのは、紺の単色ではなく、茶色(温かみのある茶系の色)などが入っていると、途端に合わせやすくなります。
あと、同じ青でも、少し緑が入った藍色になると、これまた一気に合わせやすくなったり。
色って深いですね。

難しいですが、まずは「色はひとつではない」ことに気づけば、小物選びももう少し変わってくるんじゃないかな、と思います。
あともうひとつ、一番大切なことは、この『小物の迷宮』を楽しむことです。
楽しむことで、コーデの幅もひろがります。思わぬところで宝物を見つけることもあります。
こればかりは最短距離でゴールにはたどり着けません。
皆さん、一緒に小物の迷宮を楽しみましょう!