2017/02/10 10:04

こんにちは、きじばとや店主イイダです。


突然ですが、これからの着物の世界についてのお話です。ちょっと真面目なお話です。
改めて言うこともありませんが、現代では着物を誂えるということは特別なことになってしまい、大抵は振袖や訪問着などの、特別なハレの日のための着物を誂えるくらいになりました。
お茶会や習い事の発表会のために誂えることはあるでしょうが、ちょっとお出かけするときのための小紋を誂えるという方はほとんどいらっしゃらないと思います。
おばあさまやお母さまがたくさん着物を譲ってくれて、しかもそれらが丈が合う、などというとてもとても幸運な方もいらっしゃいますが、それはとても稀なことで、そういう幸運に恵まれず、けれど着物で気軽なお出かけを楽しみたい私たちは、リサイクル店や骨董市などで小紋を探して着ているわけです。

ですが。

当たり前ですが、今出回っている着物たちが増えることはおそらくないわけです。
平成キモノブームと呼ばれたブームは今でも続いており、しかも丈や裄を気にしない海外の方たちも参戦してきているので、出回っている着物は減り続ける一方です。
どこかにものすごい豪商の蔵があって、そこに着物が詰まっていて、それがどれもこれも状態が良くて、そんな蔵がある日突然発見されたとしても。
戦争で焼けなかった豪商のお宅のおばあさまが亡くなって、遺品を整理したら桐たんす何棹分もの着物が出てきたとしても。
この状況が変わることはありません。

実は、リユース着物の流通が減ってきています。
仕入れが難しくなりはじめました。
まだしばらくは大丈夫ですが、明らかに減ってきているのが分かります。

着物文化がなくなることはありません。きっとこれからは、普段着の着物に関しては、ポリエステルをはじめとする優秀な繊維で、手に入る価格の新品の着物が出回りはじめるだろうと思いますし、ハレの日のための着物も縫われ続けます。
リユース品として流通する着物も、なくなるということまでは、まだまだないと思います。ただ今後は、リユース品に関しては、品質や内容については、厳しくなっていくと思います。
裄や丈が合わないことはもちろん、多少のしみや胴裏のヤケなどについても、気に入ったものを手に入れるためには、ある程度の妥協も必要になってくるかもしれません。

そこでイイダは考えました。
「リユース着物が出回っている今のうちに、一生分の着物を揃えよう」
長く着られる着物はもちろんですが、逆に考えて「こんなかわいい色、年齢的に短い間しか着られないかもしれないけれど・・でも、今しか着られないなら今買っちゃおう!」という気持ちにもなりました。
正絹の着物を、自分の好きな生地や色柄を、選んで買える。しかもそれが、自分のお給料やお小遣いで買える範囲で手に入るのは、今のこの時代が最後かもしれません。
今、私は、少しずつ手持ちの着物を増やしています。『着られるもの』ではなく、『着たいもの』を。
そして、ゆっくりと1枚ずつ、和裁の先生に教えを乞いながら、自分の丈に仕立て直しています。・・・・と書くとかっこいいのですが、実は、去年の1月から単衣として仕立て直している着物は、まだ出来上がっていないのですが(涙)
でもまあ、そんな感じでカタツムリよりも遅い歩みではありますが、1枚1枚、年を重ねても着られる着物や、自宅で洗えるように紬の単衣を増やしたり、そんなことをしています。
「八掛の色もいいし、これは袷のままで着たい」と思ったものや、「すごく素敵だけど、ちょっとしみがある」ものは、お金をためて少しずつ、しみ抜きや仕立て直しに出しています。(袷の仕立て直しは、私の和裁の腕では一生かかっても間に合わないので・・・)

探してみれば、たまにキャンペーンなどで、安く仕立て直しをしてくれるお店もあります。
最近は海外に職人さんが赴いて技術指導をして、海外の縫い子さんたちが縫ってくれるところもあります。かなり安いです。
私も数点、お願いしましたが、じゅうぶんな出来映えです。(お店によるかもしれませんが)
とても気に入った着物を見つけたけれど、丈が足りない・・・というときは、そういったキャンペーンを利用して、少しずつ仕立て直しに出すのもありだと思います。着物は一期一会、もうその着物とは二度と出会えないのですから。

さらに今後は、流通するリユース着物の絶対数が減ることで、いろいろなルールにこだわっていると、『着られる着物』は少なくなります。
丈や裄に関する細々とした「~じゃないとみっともない」は、だんだんゆるくなることでしょう。(もちろん礼装時のコードは別としてですが)
洋装のアイテムと組み合わせたり、裄が短くて腕が出てしまうときは手袋やカットソーと合わせてみたり・・・というコーデは、まだキワモノみたいに見る方もいらっしゃいますが、いずれ「割とよく見るコーデ」として落ち着くような気がします。
アンティーク着物を彼女たちがああして着こなしているのは、もちろんお洒落のためもありますが、『アンティーク着物を着るにはああすするしかない』ということでもあります。丈も裄も絶対的に短いのに、生地はもう傷んでいて、洗い張りに出すことは無理。それに洗い張りに出して仕立て直しなんかしていたら、お金がいくらあっても足りない。でも、アンティーク着物は着たい。・・・・ということで、新しい着こなしが生まれた、という背景もあると思います。
ということは、今後、リユース着物で着物を探す私たちにも、そういった流れが来ることは、自然なことかもしれません。

心は柔軟に。でも、きちんと着られる着物も、ちゃんと用意しておきたい。
最近イイダはそう考えて、『その日のための準備』もはじめています。
きちんと着たい色無地や紋付は、長く着られるいい色のいいもので、自分の丈に合うものを数枚用意しておく。帯は、それらに合わせられるものが2本くらいあれば、いざというときに備えるには十分。(礼装用の帯はまだまだ流通すると思いますし)
礼装用でも小紋でも、すごく気に入ったものがあれば、思い切って買って、お金がたまったときに丈を直して。
逆に今しか着られない色柄ならば、多少丈が合わなくても、「それはそれ」として、そのままで「好きなものを、今を楽しむ」。
そんな感じで、最近イイダは自分の着物を見直して、買い物の仕方がかわりました。
みなさんはどう思われますか?