きものセレクト 

2017/09/21 10:23

こんにちは、きじばとや店主イイダです。

 
着付けレッスンなどの際に、よく聞かれる言葉があり、以前から気になっていました。
「ここは、線が合っていないとだめなんですよね」
「これは、こうじゃないとだめなんですよね」
「半襟は、どこから出すのが正しいんですか」
「あの人の帯、位置が高すぎますよね、おかしいですよね」
「あれ、まちがってますよね」
「帯を締めるときは、ここはこの手順じゃないといけないんですよね」
 
常々私がお話していることですが、着物はあくまでも『着るもの』であり、つまり人々の生活に密接したものであるはずと思うのです。
ということは、その人が「気持ちよく」「着やすく」「楽で」「動きやすく」かつ、自分が「これを着ているときが楽しい、美しい、素敵だ」と感じるものであるべきだし、そうじゃないのであれば、それはただのつまらない制服のようなものになってしまうと思うのです。
 
洋服で考えてみてください。
必ず着る手順が決まっているでしょうか?
ベルトの位置は必ずみんな同じ位置じゃないとだめでしょうか?
衿元のボタンは、必ず何個までとめる、とか決まってるでしょうか?
決まってないですよね。それは、洋服が文化として定着して、人々の生活の一部になって、みんながそれぞれ自分の好きなスタイルや、自分に似合う着こなしを楽しんでいるからだと思います。
 
イイダも着付け教室に通いましたが、確かに最初は「紐の結び方やまとめ方まで指定されて、なんだか窮屈だなあ」と感じたこともありました。
今考えればそれは、着付けの際に無駄な動きを省くための準備であったり、緩みにくく着崩れしにくいための結び方だっただけで、慣れてしまえばそれらは各自の裁量で好きにやっていいところなんだと理解できました。(そういう説明はなかったですが・・・そう理解しました)
帯の位置や、衿の出し方、線の合わせ方、おはしょりの出す分量・・・いずれも『指定』されましたが、それは何らかの基準がないと初心者は混乱してしまうので、まずは『指定していただけ』なんだと思います。(そう理解しています。そうじゃない流派や先生もいらっしゃるかもしれませんが 笑)
 
着物によっては、指定されただけのおはしょりが出せないときもありますし、体型によっては、決められたことを守れないこともあると思います。
そこをどうやって美しく着るか、が、本来の着付けなのではないかなと思います。
 
例えば半襟ですが、『耳の下、または少し後ろあたり』から出すようにと教えられますが、気を付けて見ていただくとお気づきになるかと思いますが、年配の方の中には、衣紋の後ろからも、半襟を少し出す着付けをされていたりします。
日常的に着物を着る頃は、着物の襟を汚さないように、半襟を少しだけ出していたんですね。(年配の方でなくても、着物でお仕事をされる方には、こういった衿をつくられる方もいらっしゃいますね)
最近のように、着物が『特別なおしゃれ着』になってから、半襟の後ろは出さないで、という流れになったようです。
理由は、後ろから半襟を出すとだらしなく見えてしまうから・・・みたいなことのようですが、上手な方は、だらしなくならず、ぴっしりと同じ幅で、絶妙な分量だけ出してらっしゃいます。
なるほどこれを初心者が最初からやろうとするのはとても難しいことでしょうから、まずは基本的なきれいな着付けを身に着けるためには、『出さない』とした方が、習得しやすいでしょう。
ですが、それが『こうでないといけない』のかどうなのか。
そこを鵜呑みにして、「あの人違うわよね」と考えるのか、「なるほど、そういう理由でそういう着方なのか」と思うのか。
 
帯にしても、最近は高めの位置に締める方が多いです。
おそらく、その方が足が長く見えたり、おはしょりの関係もあったりするのでしょうが、雑誌に載る写真が、そういう着付けのものが増えると当然、「あ、こうするんだ」と思われたり、「あれ素敵だな」と思って真似されたりして、『帯は高め』という流行のようなものができたのだと思います。
着物は『着るもの』、文化ですから、当然流行りなどもあるわけですし、それぞれの好みもあります。
帯を高めに締めるのが好きならば、高く締めたらいいと思います。
ご自分の身長や体型に合わせて、またはその日着る着物や帯の雰囲気で、変わってくるのも当然です。
それを、「あれは違いますよね、間違ってますよね」と思うか、「なるほど、ああいう着方なのね。ふむふむ」と感じるのか。
 
きれいに着るための指針として、こぶし1つ分だとか、耳の少し後ろだとか、人差し指1本分だとか、約8センチだとか、この線とこの線がつながってないととか、まっすぐじゃないととか、そういう基準を作っただけであり、そこにガチガチにこだわるのは本末転倒なのだと思うのです。
基準は基準。指針は指針。目安は目安。
意識した方がきれいに着られますし、やり方も統一していればお稽古で混乱しませんし、上達も早いです。
ただ、それを『絶対の正解』として、「あの人間違ってる」「これじゃだめでしょうか」となって、心が窮屈になってしまい、せっかくの着物のお出かけでも「誰かに指摘されたらどうしよう」「あの人だめ、あのお店だめ」と思って楽しめないのであれば、それはちょっと寂しいです。
「ここはこぶし1つぶんよ」「おはしょりは何センチよ」「あなた、半襟はそこから出すのじゃないわよ」と教えてきて、でも一番大切な「なぜそうするのか」という一番大切なことは語られないことが多く、そのために「こうじゃなきゃだめなんだ」と思い、自分が着るときもドキドキ不安だったり、自信が持てなかったりしてしまう・・・ということが原因のひとつなのかもしれません。
結局、「あれは間違いですよね」「あれは違いますよね」「これで合ってますか?」という言葉は、ご自分自身に向けられた不安なのでしょう。
 

着物は、『着るもの』。相手や場所に対して失礼なことになるのだったら別ですが、そうじゃない個人的な場では、『気持ちよく、楽に、楽しく、美しく、自分が自分を好きになれるアイテムである』べきだと思うのです。
同じ着物好き同士、お互いを採点するようにするのではなく、自分の「できていないところ」を探すのではなく、お互いに良いところを吸収し合って、教え合い、質問し合い、情報交換したりして、自分の着こなしのプラスにしていく方が、楽しいのではないかな・・・と、わたくしは思います・・・が、いかがでしょう(笑)
もっと気楽に楽しく、みんなで美しくなりましょうよ!と、イイダはいつも思っています。