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2018/08/21 14:36

きじばとや店主イイダです。

先日、帰省で祖母に会ったときに、
「ばあちゃんの鹿の子の浴衣、私が着てるよ」
と話したら、とても喜んでくれました。

祖母がまだ若い頃に、わざわざ作家さんのもとを訪ねて、つくってもらったものだそうで、とてもオーソドックスな鹿の子なのですが、だからこそ年月が経っても色褪せず、孫の代になっても流行り廃りなく、年齢を重ねても着られます。
 
祖母と私の体格は全く違うので、着付けをはじめた頃はこの浴衣をうまく着ることができず、本当に苦労しました。 それからあれこれと勉強し、練習して、今ではどこがそんなに苦労したのか分からないくらいに、すっと着られるようになりました。
腰をいためてからは下駄を履けなくなりましたので、最近は専ら襦袢と合わせて足袋と草履を履いて、夏着物風に着ることが多いのですが、白い衿が深い藍によく映えて、鹿の子がよりすっきりと見えて、お気に入りの浴衣です。
帯はそのときの気分で、夏のなごやを締めたり、半幅帯を締めたり・・・とさまざまですが、しっかりした絞りのおかげで、なごや帯にも負けず、しっくりときます。

お客様とお話すると、着付けをはじめたきっかけは、お母様やおばあ様から譲られた着物を着たくて・・・ということを良くお聞きします。
私も同じでした。 祖母からもらった浴衣がすべてのはじまりで、この鹿の子の浴衣がなければ、おそらく今、きじばとやもなかっただろうと思います。
着物というのは不思議なもので、特にそれまで着物になど興味がなかったとしても、母親や祖母から譲られた着物というのは処分しにくく、そしてまた、そのままにしておくのも心苦しく、なんとも気になって仕方なく・・・。 ある日、「着付け、・・・習ってみようかな」 と思ってしまうもののようです。 不思議ですね。
 
今年の夏は、「浴衣を夏着物風に着たいのですが」というお問い合わせや、レッスン依頼を多くいただきました。 浴衣は洗えますので汗をかく季節にも気軽に着られますし、夏着物風にすることで合わせる帯の幅もぐんと広がりますし、お祭りや花火大会だけでなく、お友達とのお食事や飲み会、ショッピングなどにも出かけられます。 襦袢でなく、衿のついた着物スリップなどで十分ですし、足袋を履くので冷房の冷えにも安心です。
今年の夏もあと少しですが、たんすの中の浴衣をもう少し長く着てみるのも良いかもしれませんね。


祖母の浴衣。オーソドックスな鹿の子ですが、今ではなかなか見かけません